生え抜き大学職員日記

日々の中でふと思ったことを書いていきます。

読書記録:冥談(京極夏彦)

『冥談』(京極夏彦、角川文庫)を読みました。

タイトル通り、怖い系のお話がいくつか収録されている短編集です。タイトルに「冥」と付くとおり、幽霊でもない、妖怪でもない、この世のものではない「何か」による怖さがテーマなのかなと感じました。

前回の『幽談』のように、前半は普通の小説っぽい雰囲気なんですが、「ここからどうなるのかなー」と思っているといきなりホラーに転換するお話もありました。おそらくですが、作者は「何気ない日常でもこういうちょっとしたことが起きたら怖いよね」ということを表現されようとしているのではないかと思います。

例えば自宅の中で、部屋の前を通り過ぎたとき、そこにいるはずのないものが視野の端に映り、その瞬間は気づかなくても少し経ってから時間差で「あれ、いま何かいた・・・?」と気づくような。実際にそんなことは起こらないと思いますが、想像するとちょっと怖いですよね。

本作の中で個人的に怖いと思ったのは「予感」でした。具体的に何か怖いものが出てくるお話ではなく、何か恐ろしいことが起こりそうな予感がする・・・と主人公が最終的に言って終わるだけなのですが、そこにいたるまでの主人公の描写などから、実は予感ではなく既に現実に主人公の身に起きているのではないか・・・と読者に想像させるようなお話でした。怖さは直接的に書かなくても伝えられるというのが新しい発見でした。