生え抜き大学職員日記

日々の中でふと思ったことを書いていきます。

読書記録:ヒトごろし(京極夏彦)

数ヶ月前に読んだのですが、記憶があるうちに書いておきます。

『ヒトごろし』(京極夏彦新潮文庫)を読みました。前回の『ヒトでなし』のシリーズとして、前段に位置付けられる作品のようです。

『ヒトでなし』は現代が舞台でしたが、『ヒトごろし』は幕末が舞台です。しかもかの有名な新撰組扱った作品です。

新撰組の小説って初めて読んだのですが、テーマとしてはとても人気があるものだと思うので、京極夏彦さんが書いたことに驚きました。なんとなく、有名なものは書かないイメージがありましたので…。

しかし、おそらくこれまで書かれている新撰組関係の小説と比べると、本作は異質な感じがするのではないかと思います。

副長の土方歳三を主人公にしているのですが、「もし土方歳三が殺人欲求を持っていたら…」という設定となっています。

殺人欲求というと最近流行りのサイコパス?と思い浮かべてしまいますが、本作の土方は殺人=犯罪という常識を理解しており、どうにかして合法的に人を殺そうとします。また、ただ単に殺すのではなく、刀で斬って殺すことにこだわります。内容や描写は暗い雰囲気なのですが、土方のひたむきで粘り強い姿勢は応援したくもなります。(目的が人斬りなので、それもどうかと思いますが…)

作者のインタビュー記事をいつだったかWEBで読んだのですが、新撰組は敵として斬った人数より斬った仲間の人数の方が多いんだそうです。そこに着目してこんなに完成度の高い作品にしてしまうのが作者の流石なところです。

なお、本作には作者の『今昔百鬼拾遺 鬼』に名前だけ登場したお涼さんというキャラクターが実際に登場します。他の作品との繋がりを思い出して読めるのも楽しいところでした。