生え抜き大学職員日記

日々の中でふと思ったことを書いていきます。

読書記録:ヒトでなし 金剛界の章 (京極夏彦)

久しぶりに記事を書きます。

6月頃から仕事が忙しくなり、ブログを書くエネルギーがありませんでした。ただその間も読書は続けていたので、いつか記事を書きたい本だけ積み重なっていくという状態でした(汗)

という経緯で、実際に読んだのは少し前になりますが、『ヒトでなし 金剛界の章(京極夏彦新潮文庫)』を読みました。

京極夏彦さんには珍しい(?)、時代設定が現代の作品です。出版社による作品概要では、宗教エンタテインメントと記載されているとおり、宗教を題材にしています。

といっても既存の宗教についての知識や情報がたくさん出てくるわけではなく(京極夏彦さんだったらそういうのは簡単に書けそうですが)、むしろ宗教を作る側のお話です。

何もかも失った中年(より少し若い?)男性の主人公が、ふとした偶然が重なり宗教の教祖のように祭り上げられていく…といったストーリーでした。

自身をヒトでなしと認識する主人公は他人を救おうという気は一切ないのですが、何気ない言動が周囲の登場人物を救っていく様子が印象的でした。

想像ですが、作者が意図しているのは「宗教とは、あくまで受け手が救われたと感じて創り出すもの」「人間を救えるのは人間ではない」ということなのではないか…と感じました。

この作品は、主人公の心の変容(人間臭さをどこまで切り離すことができるか)がもう一つの大きなテーマとなっている気がします。今作ではそのあたりがまだ途中で終わっているので、続きが出るのを楽しみにしたいと思います。