読書記録:虚言少年(京極夏彦)
先週は、『文庫版 虚言少年』(京極夏彦、集英社文庫)を読みました。
主人公は前回の『オジいサン』と正反対で、小学6年生の少年です。小学生が主人公の物語というのは、ズッコケ三人組とか少年探偵団(江戸川乱歩)とか、結構ありますよね。例が古いですけど。
ただ、京極さんの作品なので、絶対小学生ではない賢さとシブさです。作者も読者のツッコミを見越しており、本作では物語序盤に“小学生だけども便宜上、大人っぽい描写になる”ことのエクスキューズがあります(笑)
タイトルに「虚言」とあるので、何か子供が詐欺とかしちゃう危なっかしいお話なのかと思いきや、冒頭数ページを読むとわかるユルいお話です。小狡くて、オタクっぽい小学生が、バカなことをして楽しむために知恵を巡らせる…といった展開です。
ちなみに時代設定は昭和なので、多分私より歳上の方には懐かしいワードもあるかと思います。もしかしたら、作者と同年代の人が小学生だった頃の時代なのかもしれません。
主人公たちはバカなことをするのも見聞きするのも好きだという設定なのですが、そのバカというのが日常生活の中に見出す笑いといった意味合いのとても健全なもので、読んでいてほっこりしました。
もちろん当時の小学生がみんなこういう楽しみを見出していたわけではないでしょうし、私自身、小学校時代を振り返ってもこんなに頭を使って生きてなかったような…。
エアコンもネットもゲームもスマホもない時代設定ですが、そういう環境ならそういう環境なりに楽しく遊べるんだなあと改めて思います。
そんなこんなで、自分の子供の頃とは全然違うのですが、なんだか自分も小学生に戻ったかのような不思議な感覚になれる作品だったと思います。