生え抜き大学職員日記

日々の中でふと思ったことを書いていきます。

読書記録:オジいサン(京極夏彦)

久しぶりの更新です。色々あってなかなか書く時間がとれませんでした。

『オジいサン』(京極夏彦、中公文庫)を読みました。

タイトルがちょっと不思議な表記で、京極夏彦さんなので、「もしかしたらホラー?」と思ったりもしたのですが、おじいさんが主人公ののほほんとしたお話でした。

京極さんの作品としてここまで平坦というか、平和的な内容なのは珍しい気がします。そもそも、おじいさんを主人公にした作品が今までなかった(これは、他の作家さんでも少ない気がしますが)ので、実験的な作品であるとは思います。

内容としても、おそらく好みがとても分かれるであろう作品だと感じました。私はとても面白かったのですが、小説に刺激を求める人には少し辛いかもしれません。

とても慎重で物事をよく考えるけど、ちょっと抜けてるおじいさんの平和な日常。クスリと笑える部分が散りばめられているという感じです。ラストが感動的なのですが、個人的には地デジのくだりが好きでした。

主人公がデフォルトで賢いのは京極作品の共通点なのですが、こんなに頭の働く高齢者っているんだろうか、と世の中の高齢者に失礼ながら思ってしまいました。でも、こういう一本芯の通ったおじいさんにいつかなりたいものです。