生え抜き大学職員日記

日々の中でふと思ったことを書いていきます。

読書記録:死ねばいいのに 文庫版(京極夏彦)

『死ねばいいのに 文庫版』(京極夏彦講談社文庫)です。ちょっと電車で読むには勇気がいるタイトルなのですが、とても面白かったです。

主人公のイマドキっぽい若者が、死亡したとある女性について関係者に尋ねて回る…という小説です。

主人公は口調やら態度やら、いわゆるヤンキーっぽい割と失礼な若者なのですが、語ることはドが付く正論。一見まともそうな大人達を次々に論破していきます。タイトルの意味は…読んでみてのお楽しみです。

読んでいて爽快な気分になり、あっという間に読み終えてしまいました。設定的には頭が悪い主人公なのでしょうけど、京極夏彦さんが書いてるとやはりというか、むしろ「いやいやこの人すごい頭いいじゃん…」と感じてしまう(笑)京極作品のキャラクターはみんな超論理的ですからね…。

主人公も魅力的ですが、対する大人達もまた、まともそうに見えてそれぞれが心理的な囚われを抱えており、その描写も鮮やかです。

きっと作中に書かれるような心情は誰もが感じるであろうものですし、そこから自分で自分を縛ってしまう人も多いんだろうなと思います。

自分の幸福は自分が考えて決めるもの。自分が苦しいと感じてることは、実は世の中の誰にも当てはまることで、自分の考え方次第でどうにでもなる。そんなメッセージを感じました。

京極夏彦さんは作品数的には過去や未来の小説が多いのですが、この作品のような現代を舞台にしていても、根底には誰もが陥る人間の弱さや、弱さへの向き合い方を示すようなお話が多い気がします。