生え抜き大学職員日記

日々の中でふと思ったことを書いていきます。

読書記録:やりがいのある仕事という幻想(森博嗣)

久しぶりの更新です。

図書館で取り寄せていた本をGW中に受け取るのを忘れ、取置き期限を過ぎて所蔵館に戻ってしまいましたので、とりあえず家にある本を読んでいました。

今回読んだのは『やりがいのある仕事という幻想』(森博嗣朝日新聞出版)です。

実はこの本は最初に読んだときにとても感銘を受けまして、定期的に読み返しているバイブルのような本です。森博嗣さんは中学生のときに小説にハマっていたのですが、近年は新書も多く執筆されており、その考え方がとても参考になるため、私は良く購入しています。

本書は仕事をしている人なら誰でも感じる悩みや葛藤に対して、大学教員→作家というキャリアを歩んだ作者が、シンプルかつ論理的な向き合い方を示してくれる内容になっています。

本書を読んで私が大切だと感じたことは下記3点です。

  1. 仕事とは、自分の楽しみ(夢、趣味等)を実現するためにお金を得る手段である
  2. 手段である仕事に、自己実現を期待したり、自分の存在意義を見出す必要はない 
  3. 自分の楽しみは、他人と比較したり、他人から羨ましがられることで得られるものではない

働く女性の増加、定年の延長で働く人口が増え、同時に仕事でメンタルを病む人も増えるなど、昨今、個人の人生における仕事というものの比率が大きくなっていると感じます。そうした中だからこそ、「仕事は金のため」と割り切り、仕事に人生を支配されないことが大切なのではないかと思います。特に私が印象に残っているのは次の文章です。

そもそも、就職しなければならない、というのも幻想だ。人は働くために生まれてきたのではない。どちらかというと、働かない方が良い状態だ。働かない方が楽しいし、疲れないし、健康的だ。あらゆる面において、働かない方が人間的だといえる。ただ、一点だけ、お金を稼げないという問題があるだけである。したがって、もし一生食うに困らない金が既にあるならば、働く必要などない。

森博嗣『やりがいのある仕事という幻想』(朝日新聞出版、2013年)p.51

私も仕事であれこれと日々悩むのですが、この文章だけでも肩の荷が降りるような気持ちになります。

また、SNSでも仕事や職場に関する愚痴、あるいは(仕事に限らない)自慢なども多くの人が発信していますね。でも、それって「仕事はこうあるべき!」とか「こんな風に働くのが私なんだ!」という自分の思い込みが原因だったり、他人からの評価を気にし過ぎているのかもしれません。時々立ち止まって、「自分はどうしてこう考えるのだろう」と分析してみるのも大事だと思いました。

本書は書かれてから10年ほど経っているのですが、内容は今でも全く色褪せずに通用するものだと思います。