生え抜き大学職員日記

日々の中でふと思ったことを書いていきます。

読書記録:遠野物語remix(京極夏彦×柳田國男)

2回目の読書記録です。

京極夏彦さんは、まだもう少し読む本がありますので、しばらく続くと思います。

さて、今回読んだのは『遠野物語remix』(京極夏彦×柳田國男、角川文庫)です。

柳田國男さんの『遠野物語』を京極夏彦さんが口語調の文にし、さらに順序を再構成したり補足を加えたりしてremixしたものです。

実は私、高校生のときに少し民俗学に興味がありまして、大学受験でも柳田國男さんとゆかりのある某大学を受験しようともして親に猛反対されたので諦めたことがありました。当時から『遠野物語』原典の方も読みたいと思ってたのですが、なんだかんだで読まずにおりました。

そんなわけで本書が初『遠野物語』となったのですが、remixというだけあって非常に読みやすかったです。遠野に伝わる怪異を聞き取り記したものとされていますが、伝聞とは思えないほどそれぞれの話にリアリティのある描写がされています。原典からそうなのか、あるいは京極さんの文章力によるものなのか、わかりませんが…。

個人的に面白かったのはマヨイガのお話でした。逆に怖いなあと思ったのは、山神やヤマハハ(山姥)のお話。

「願わくはこれを語りて平地人を戦慄しせめよ」これは原典にもある柳田國男さんの文だそうですが、平地人の私、戦慄せしめられました。

それにしても遠野だけでもこれだけの怪異があるとは…。ただ恐らく、遠野に伝わるとされる本書のような怪異譚は、かつては日本全国に存在したのだろうと思います。遠野では立地環境的に山に関するお話が多くあり、海に近い場所には海に関した怪異が伝わっていたのでしょう。

しかし、本書を読むと、当時もし生きていたら、怪異との距離感というか、付き合い方って難しいだろうなあと思いますね。一方で人生の教訓となるようなお話があるかと思えば、一方で人間にはどうしようもないようなお話もあり、これらをどのように受け止めれば良いか、非常に悩ましい気がします。

当時の人々がどのように感じていたかはわかりませんが、そもそもごく普通に存在するものに対して、「自分はどう考えたら…」という発想自体が現代的なのかもしれませんね。そんなことをつらつら考えさせられた本でした。