生え抜き大学職員日記

日々の中でふと思ったことを書いていきます。

読書記録: 豆腐小僧双六道中おやすみ 文庫版(京極夏彦)

初めて読書記録を投稿してみます。

ここ一年ほど、通勤電車で図書館で借りた小説を読んでいるのですが、自分の記憶のためにも読んだ本と感想を書いておこうと思います。

小学校〜高校までは物語や小説をよく読んでいたのですが、大学生のときは専攻分野の本や論文、新書ばかりになってしまい、社会人になってからは自己啓発系をよく読んでいたので、小説は久しぶりです。

読書するようになって思うのですが、小説を読むとなんだか癒されますね。仕事の忙しなさから離れて、ゆっくりと物語に没入する時間は気分が落ち着くものです。

さて、今回読んだのは京極夏彦さんの『豆腐小僧双六道中おやすみ 文庫版』(角川文庫)です。

京極夏彦さんの作品は中高生のときによく読んでいまして、懐かしくなって読んでいます。

当時より作品もかなり増えていて、実は一年前から読書を始めてずっと京極作品を読んでいるのですが、まだ全て読み切れません。

今回の『豆腐小僧双六道中おやすみ』は豆腐小僧のシリーズ2作目となります。豆腐小僧とは、江戸時代の黄表紙で流行した妖怪だそうですが、人を驚かせたり騙したりするわけではなく、ただ豆腐を持っている小僧…というだけの妖怪だそうです。そんな意味のない妖怪を生み出すのが江戸という都市の文化的ゆとりだったのでしょう。その豆腐小僧が妖怪と人間の両方が起こす騒動に巻き込まれていく…というのがこのシリーズのお話です。

作中では豆腐小僧の他にも多数の妖怪が登場しますが、妖怪達はあくまで概念の存在であり、人間達に妖怪は認識されないけど、妖怪達は人間を認識しているという設定がなされています。そして人間側のストーリーと妖怪側のストーリーが交互に進んでいきます。「妖怪とは、人間が怪異の説明のために作り出したものである」という、デビュー作以来の京極さんの一貫したスタンスが反映されていると思いました。

こうした設計は一見ややこしく思えますが、両者をうまく交錯させるストーリーに仕立てあげられているところが流石だなあと思います。また、このシリーズでは地の文が講談調になっており、人によって好みが分かれるようですが、私は軽快に読めるので好きです。

何よりも本作の魅力は、豆腐小僧が非常に愛らしいところでしょう。読んでいると賢いのか抜けているのかわからなくなってきますが、前作(シリーズ1作目)よりは賢くなっている気がしますね。

終わり方的にまだ続編があるようですが、まだ出版されてはいない?ようなので、いつか続きを読むのが楽しみです。